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逆境に立ち向かうナショナルブランド(NB)生存戦略。流通商談で棚割りを死守するために必要な「売れる理由」の作り方

最終更新日: 2026 / 05 / 07

公開日: 2026 / 05 / 07

ナショナルブランド(以下、NB)が「なんとなく売れる」時代は終わってしまいました。品質とコストパフォーマンスの高さからプライベートブランド(以下、PB)を合理的に選ぶ生活者も増えているなか、毎回の流通商談や選定会が「棚割りに残れるかどうか」の戦いとなっている営業担当の方もいるでしょう。

本記事では、メーカーと流通、生活者をつなぐセールスプロモーションを提供する当社、株式会社エクスクリエの事業支援室 マーケティングG 部長を務める長谷川 孔介氏に取材。昨今のNBをめぐる状況と課題を洗い出し、メーカーが流通商談でバイヤーを納得させるために必要なポイントを整理します。

なぜ、昨今NBは熾烈な生存競争に直面しているのか? 外的要因から分析

エクスクリエ兼重(以下、兼重):
まずは、昨今のNBを取り巻く状況から教えてください。物価高による節約志向の高まりを受けて、生活者の行動は変化している印象です。店頭でのメーカーの競争環境はどのように変わってきているのでしょうか。

エクスクリエ長谷川(以下、長谷川):
NBが「なんとなく棚に置かれ、なんとなく売れる」という環境ではなくなってしまったと言えるでしょう。これまでのNBは、テレビCMなどのマス広告でブランド認知を高めたうえで、一定の配荷力があれば、ある程度棚に残り続けることができましたよね。

しかし昨今は、物価高の影響で無駄な買い物を避け、自分にとって価値があるものだけを厳選のうえ、計画的に購入する生活者が増えています。結果、バイヤーはこれまで以上に「売れる理由が明確な商品」をシビアに選定するようになりました。逆に、違いが伝わらない商品、数字が動かない商品は、想像以上に早く見直し対象になってしまっています。

さらに、商品単体の売上のみならず、「その商品がカテゴリー全体に対してどのような波及効果をもたらすのか」といった観点でもNBはジャッジされています。今後もこの流れは加速し、NBメーカーにとって厳しい環境は続くと考えられるでしょう。

1cb53afc540d977cb4ef8d6e9b8f49cfキャプション:長谷川 孔介氏(株式会社エクスクリエ 事業支援室 マーケティングG 部長)

 

兼重:
まさに逆境ですね。昨今はPBの存在感が強まっているように感じますが、「NB vs PB」の競争はどのような状況になっているのでしょう。

長谷川:
かつて、NBとPBはそれぞれのポジショニングがありましたが、昨今は境界線があいまいになり、同じ土俵での競争が求められています。要因は2つ挙げられます。

1つ目は、「安かろう悪かろう」からの脱却。メーカーとの共同開発商品が増えてきたこともあってか、PBのクオリティは年々向上しています。「妥協して購入するもの」ではなく、「選ぶに値する、十分な妥当性があるもの」として、生活者にポジティブなイメージが浸透してきていると考えられるでしょう。

2つ目は、価格の安さと利益率の高さ。多くのPBはNBより安価なままクオリティアップに成功しており、価格の面でも優位性を発揮しています。また、流通側が利益率の高いPBをできるだけ多く配荷したいと考えるのは当然でしょう。強い理由がない限り、生活者が「NBをあえて選ぶ」必要はなくなってきているのかもしれません。

兼重:
そうなると、もはや小売にとってNBを配荷する理由がなくなってしまいそうですが……、長谷川さんの考える「流通がNBを扱う意義」を教えてください。

68b1ec5687daad3a5b591995908532ddキャプション:兼重 成美氏(株式会社エクスクリエ 事業支援室 マーケティングG) 

長谷川:
「ブランド好意度のある商品」や「ロイヤルカスタマーがいる商品」ならば、小売にとってのメリットが大きいため、取り扱う十分な理由になり得るでしょう。来店につながる引きの強さを持ち、他商品の併買も期待できるなら、今後もそのNBはバイヤーに重宝されると思います。そこをいかに可視化して伝えるかが重要ですね。

「攻めのトライアル」から「守りの棚割り維持」へ。流通商談前に表面化しやすいメーカーの課題

兼重:
市場環境がシビアになるなか、エクスクリエに寄せられるメーカー担当者様からの相談内容にも変化はありますか。

長谷川:
ええ、明確に変わってきていますね。以前は「どうすれば新規のトライアルユーザーを獲得できるか」「売上をもう一段上積みできるか」という、いわば未来の売上を作るためのポジティブな相談が中心でした。

しかし現在は、もっと切実な「ディフェンス」の内容が増えています。「いかにして棚に残り続けるか」「どうすれば来店してもらえるのか」という、今の売上を守るための戦略相談ですね。それに付随して、「バイヤーに示すためのデータやロジックをどのように作ればいいのか」といった相談も増えています。

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兼重:
流通商談を控えた時期にはそのような相談も増えると思われます。NBメーカーは商談前、どのような課題に直面しているのでしょうか。

長谷川:
企業のポジションによって大きく2つのパターンに分けられます。

まず、カテゴリーで1~2位を争うようなトップメーカーの場合。彼らは小売側から「POSデータを活用して、一緒にカテゴリー全体の売上を伸ばす提案をしてほしい」と求められています。小売との共同戦線を張るための議論の場をどう構築するか、小売が狙いたいターゲットと自社の商品をどう合致させるか、そのためのエビデンスや期待値をどう提示するかなどが課題となります。

一方、上位2ブランドに次ぐ中堅ポジションのメーカー の課題は「棚に残してもらう理由の可視化」です。今やPOSデータによって、あらゆる商品の売上が白日の下にさらされる時代。「データで語る」流通商談が標準化されるなか、立ち上がりが悪い商品は「置き続ける理由」がない限りあっという間にカットされてしまいます。熱意だけではバイヤーを説得することはできません。商談の場で説明可能な実績を、目に見えるかたちで、いつまでに、どこで、どう作るかという設計が重要になってくるでしょう。

流通商談で棚割りを守り抜くために必要な「理論武装」の極意

兼重:
NBメーカーの営業担当者は実務のなかで、「棚に残す理由」をどのように整理し、流通商談に臨むべきでしょうか。

長谷川:
大きく分けて2つの軸で整理できます。

1つ目は、「情緒的な理由付け」。生活者がその商品を選びたくなる理由を、季節要因や販促計画に絡めて洗い出します。

【情緒的な理由付けの例】
・クリスマスやバレンタインといったイベントが近いから
・IP(キャラクター)を使った販促施策で話題化が見込めるから
・人気タレントがCMに起用されるから
・お得なキャンペーンが展開されるから
・これまでの商品と差別化できる目新しい特長があるから
・パッケージ刷新、リブランディングなど既存商品でも新しく映る要素があるから

2つ目は、「定量的な根拠」。どのような結果をもたらすのかを裏付ける、データやロジックです。昨今の流通商談でバイヤーがチェックしている部分ですね。商品単体だけでなく、カテゴリー全体への貢献度も注視されています。

【定量的な根拠の例】
・販売実績
・回転率
・購入頻度
・カテゴリー売上
・カテゴリー客単価

生活者に選ばれる理由だけが揃っていても、そもそも流通商談でバイヤーに選ばれなければ棚には残れません。逆に、数字成果だけを追っていても、中長期で生活者に選ばれ続ける理由がなければブランドは伸びず、PBに追い越されてしまうかもしれません。定性と定量のどちらかではなく、どちらの要素も掛け合わせて一体で設計する必要があると考えています。

兼重:
流通商談までの限られた期間において、メーカーが最も重視すべきことは何でしょうか。

長谷川:
理想は「未来にどんな施策を仕掛けていくか」を設計していくことです。ただ、店頭に足を運ばせるための仕掛けを提案しようにも、伸び悩んでいる売上の打ち手を説明しようにも、「建設的な会話をするための土台」が欠かせません。データを武器に理論武装して土台を固めましょう。どのチェーンの、どのエリアで、どの期間に、どのような購買行動が起きたのか……。とにかくデータを細かくブロック分けし、それに対してロジックを立てるべきです。

「全国で売れたから」「SNSで話題になったから」といった理由ではバイヤーは納得してくれません。自分たちの商品がその店のその棚に置かれるべき理由を、細部まで筋道立てて説明できる状態にしておくことが、最大の防衛策であり、将来的な攻めの材料にもなるのです。

今求められる「バイヤー目線」。売った・買ったの関係性を超え、ともに生活者に価値を提供する関係へ

兼重:
NBメーカーの営業担当者に必要な視点を一言で表すと、どのようなものになりますか。

長谷川:
必要なのは「バイヤー目線に立つこと」です。これまでのNB担当者は、いかに良い商品を作り、いかに生活者に届けるかという「メーカー 対 生活者」の視点が中心でした。しかし今は、そのあいだに立つ小売と、いかに共存・共創していけるかも問われています。

流通側にお願いして「売れる棚」を作ってもらうのではなく、まず自分たちで「売れる状態」と「説明できる数字」を提示し、バイヤーとともに「生活者が喜ぶ棚」を作っていく。この「スタンス」と、それを裏付ける「ファクト」の両輪を持つことが、今のNB担当者に求められていると言えるでしょう。

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兼重:
最後に、エクスクリエはNBメーカーを支えるセールスプロモーションのパートナーとして、どんな価値を提供していきたいですか。

長谷川:
モノがあふれ、高品質なPBも次々と登場している昨今ですが、NBメーカーのみなさまは、本当にこだわり抜いた素晴らしい商品を作っていらっしゃるはずです。しかし、その「良さ」は、必ずしもバイヤーや生活者に正しく伝わっているとは限りません。

どんなに高品質な商品であっても、生活者に伝えるためのメディアや仕掛け、バイヤーに伝えるための実績や調査データなどに、「翻訳」しなければならない場合もあるでしょう。

エクスクリエはメーカーと生活者、そして流通をつなぐ「翻訳者」でありたいと考えています。より多くの人に商品を試してもらい、好きになってもらい、愛されて使い続けてもらいたくなるような仕掛けを通じて、メーカー様やその先の生活者へ、これからも価値を提供し続けていきます。

 

取材協力

■長谷川 孔介
株式会社エクスクリエ
事業支援室 マーケティングG 部長 

YouTube制作会社売却後、DMM.comにて新規事業開発・事業再生、株式会社ネクストレンドという年間3,000案件実施のインフルエンサーマーケティング会社にて取締役を経験。

現在は、株式会社クロス・マーケティンググループにてグループ経営企画GMを務めるとともに、株式会社エクスクリエではプランニングG・マーケティングG 部長として戦略立案と事業推進を統括。さらに、株式会社REECHにてゼネラルマネージャー(GM)としてインフルエンサー事業全体を管掌するなど、3社・4事業部を横断して経営および事業責任を担う。

 執筆者プロフィール 

■ 安光 あずみ

 Web広告代理店で営業や広告ディレクターを経験したのち、フリーライターへ転身。企業の取材・撮影から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆している。ペンネーム「ぼっちのazumiさん」名義でも活動中。Yahoo!ニュースエキスパート認定クリエイター。 

 

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