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最終更新日: 2026 / 08 / 05
公開日: 2026 / 08 / 05
●UGC公式採用の3大メリット
広告予算が限られていても、ウェブ上の言及シェア(Share of Voice)を高められる理由と、CVR向上につながる具体的な仕組み
●UGC公式採用の先進事例
単なる「リポスト」にとどまらない戦略的なUGC公式採用を、4つの型で紹介
●実践3ステップ
観察・社内合意・仕組み化の各フェーズで何をすべきか、先進事例とともに解説
「マス広告に投下できる予算がリーダー企業の10分の1以下」「短期ROIを求められ、中長期の施策が稟議を通らない」——そうした構造的な制約を抱えながら、生存戦略を模索している方は多いはずです。この記事では、売上を伸ばすための逆張り戦略として「UGC(ユーザー生成コンテンツ)の公式採用」を解説します。
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潤沢な広告予算を持つリーダー企業と同じ土俵で戦うことは、2番手ブランドにとって合理的ではありません。
有効な打ち手が、一人の熱狂的なファンの声(N=1)から生まれたUGCを公式がハックし、資産化する「UGC公式採用」という逆張り戦略です。ファンが既に発信している熱量を、メーカーが「公認」という形で増幅させることで、広告費をかけずに指名検索数とウェブ空間におけるブランド名の自発的な第三者言及である「サイテーション」を積み上げられます。
UGC公式採用には、予算制約を抱える2番手ブランドに特有の3つの構造的メリットがあります。各メリットをブランドマネージャー(以下、BM)の業務文脈に即して解説します。
インターネット上のShare of Voice(SoV)(市場における自社ブランドの露出シェア)は、広告費ではなくウェブ上のオーガニックなサイテーション総量で決まります。
ファンが発信するUGCを公式が「公認」し、拡散を支援する仕組みを整えれば、リーダー企業の3分の1の予算でも高いROIでSoVを創出できます(※要確認)。これは「広告予算が少ない=SoVが低い」という従来の等式を崩す、2番手ブランドにとって構造的に有利な打ち手です。予算配分の制約を、戦略の制約と混同する必要はありません。
ID-POSデータやアンケートだけでは、購買行動の裏にある生々しい「諦め」や「不満」は可視化できません。
UGCには、R&D(研究開発部門)が想定していなかった「異質な利用メリット」が潜んでいます。このN=1インサイトを戦略に落とし込むことで、競合がまだ気づいていない需要を先取りし、バイヤーとの棚割り商談における差別化ポイントにも転換できます。「なぜこの商品がこう使われているのか」を語れるデータは、数字だけでは動かない相手を動かす武器になります。
ブランドが制作する「洗練された公式クリエイティブ」は認知には強いですが、購買直前のショッパーの意思決定を後押しする「自分ごと化」には弱い面があります。
一般生活者の「リアルな生活の知恵」として発信されたUGCは、購買を迷うショッパーにとって強力なトリガーになります。当社の調査(2025年12月)によると、生活者が「最も信頼する情報源」の第2位は「一般消費者(口コミ・レビュー投稿者)」(16.9%)で、ミレニアル世代(Y世代)ではこれが第1位となっています。企業が磨いた公式クリエイティブよりも、購買を迷うショッパーの背中を押すのは「実際に使った人の声」だという傾向は、データにも表れています。商品棚の前で迷う購買者に対して、リーダー商品ではなく自社商品を選ばせる「最後の一押し」として機能します。
関連記事:【自主調査レポート】XYZ世代の消費実態・社会課題への関心に関する調査(2025年)
単なる「リポスト」にとどまらない戦略的なUGC公式採用を、4つの型で紹介します。各事例ではBM視点のポイントに着目してください。
事例:「My フルーツ³ フラペチーノ」
スターバックスの一部店舗限定商品「My フルーツ³ フラペチーノ」は、ベースやフルーツの組み合わせが162通りあります。コアなファンが「最強カスタムレシピ」をSNSに多数投稿したのを受け、公式はこれらを「みんなのカスタムレシピ」として定期的に紹介しました。さらに、その組み合わせをワンタップでモバイルオーダーできるQRコードとして公開しています。
BM視点のポイント:
ファンの投稿モチベーションを高めながら、店頭での注文複雑化・滞留時間増加というオペレーション上のリスクを同時に解消した点が秀逸です。「認知→投稿→共有→モバイル注文」という購買フローをシームレスに繋げることで、UGCが単なるPRではなく購買決定を促すCX(顧客体験)の一部として機能しています。施策単体のバズではなく、購買フローへの組み込みがROIを高める鍵です。
事例:「無限さっぱりスパイス」と「チャレぽん」
消費者の「揚げ物にぽん酢をかけると衣がベチャッとする」という諦めに応えるため、ミツカンは粉末タイプの味ぽん「無限さっぱりスパイス」を開発しました。さらに「Let's チャレぽん!キャンペーン」を実施し、ユーザーの手抜きレシピを公式が絶賛する施策を展開しています。
BM視点のポイント:
綺麗でおしゃれな料理提案を好む1番手ブランドの手法を意図的に捨て、ユーザーの「リアルな罪悪感・手抜き」を公式が肯定することで、強固な親近感とブランドへの信頼を構築しました。「2番手ブランドの差別化は、リーダーが選ばないポジションを選ぶこと」という逆張り戦略の好例です。リーダーが「正道」を占める市場では、「邪道の肯定」が最大の差別化になります。
事例:「どん兵衛アレンジ(レンチンどん兵衛)」
「どん兵衛を耐熱容器に移してレンジで加熱すると生麺風になる」という裏ワザがネット上で話題になりました。通常なら安全上の懸念からメーカーが否定しかねない事例ですが、日清食品は「必ず耐熱容器に移し替える」という安全策を明記した上で、これを公式公認レシピとして逆輸入しました。
BM視点のポイント:
ファンが発見した"裏ワザ"を「邪道」と切り捨てず、公式自らが「レンチン洋風どん兵衛」などのアレンジを考案し、他社家電ブランドとのコラボにまで発展させました。双方向のコミュニケーションがSNS上のサイテーションを急増させ、ブランドとファンの間に強い絆を生み出しています。「品質保証部門が承認できる安全策の明記」というプロセスを組み込んだことが、社内合意を得た要因でもあります。
事例:「#ワークマン女子」とアンバサダーマーケティング
もともと作業服ブランドだったワークマンは、アウトドアやキャンプ愛好家がSNSで発信する独自の使い方に注目しました。熱狂的なインフルエンサー約40名を「公式アンバサダー」に任命し、商品開発を共同推進しています。
BM視点のポイント:
最大の特徴は「金銭的な報酬を一切支払わない」ことです。代わりにワークマン公式メディアや店頭でアンバサダーを紹介し、彼らの認知度向上を支援するWin-Winの関係を構築しました。「作業服」から「高機能カジュアル」へ、ユーザーとともに市場価値を再定義した究極の共創事例です。予算を使わず市場の定義そのものを書き換えた点が、2番手ブランドにとって最も示唆に富む事例です。
SNSの熱量を店頭での購買行動に直結させる「OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)」戦略は、2026年のFMCG領域で最も注目されるUGC活用の進化形です。オンラインだけでUGCを完結させることは、購買ラストワンマイルでの機会損失につながります。
花王グループカスタマーマーケティングは、ドン・キホーテと協働し、TikTokで人気のクリエイターのショートムービーを店舗のデジタルサイネージや店内放送として実装しました。
この施策により「ドンキで○○ちゃんの声を聞いた!」という新たなUGCが大量発生し、店頭とオンラインが連動した「OMOループ」が形成されています。オンラインで育てたブランドの熱量を、購買の最終意思決定が行われる棚前に直接届ける仕組みとして機能しています。
UGCのデータは、定番棚の確保や特売依存脱却に向けた小売バイヤーへの交渉材料としても有効です。
「リーダー企業は広告SoVでは上回っていますが、実生活での利用言及(サイテーション)では当社が上回っています。このUGC連動サイネージを設置すれば、値引きなしで棚の回転率が○%向上します」というロジックは、バイヤーを動かす説得力を持ちます。ID-POSデータとSNSサイテーションを組み合わせたプレゼンテーションは、感情ではなく数字で動く相手に有効な手段 です。
UGCを単発のバズで終わらせず、指名検索増加と売上貢献に繋げるための実践ステップを解説します。各フェーズでの具体的なアクションを整理しました。
テキスト検索だけでは、真の愛用者の声の大半は拾えません。SNS上には、ブランド名やハッシュタグが明記されないまま投稿された「サイレントUGC」が数多く存在します。こうした投稿には、本人も言語化していない「リアルな利用シーン」が写り込んでいることが少なくありません。
テキストだけを対象とする従来のソーシャルリスニングでは拾いきれないこの領域を、AIによる画像解析で抽出することが出発点です。これをID-POSデータと掛け合わせることで、競合がまだ気づいていないインサイトを炙り出せます。例えば「買い物後の帰宅途中に開封して使う」といった習慣が可視化されれば、パッケージ設計や売場づくりの改善ヒントに直結します。
UGCを公式採用する際の最大の障壁は、社内の承認プロセスです。
リスクを嫌うR&Dや品質保証部門には、どん兵衛の事例のように「安全な使用法の共同策定」や「免責事項の明記」というロジックを添えることで、稟議のハードルを下げられます。経営陣への説明には、「高騰する指名キーワードのCPC(クリック単価)対策」としてUGC活用によるコンテンツ調達コストの削減効果をROIで定量化する方法が有効です。「感情の話ではなく、数字の話」に変換することが社内合意の鍵です。
ファンの継続的な発信を促すには、金銭的な報酬よりも「承認欲求の充足」が有効です。
ミツカンの「公式認定証」やワークマンの「アンバサダー任命」のように、ファンにブランドとの特別な関係を示すステータスを与えましょう。さらに、UGCキャンペーン参加者がその後どれだけリピートしているか(LTV:顧客生涯価値)をID-POSデータと紐付けて追跡し、施策の効果を可視化するエコシステムを構築します。この数値化されたLTVデータこそ、中長期施策の稟議を通すための最大の武器になります。
予算、知名度、流通網——すべてのリソースでカテゴリーリーダーに劣る2番手ブランドが生き残る道は、リーダー企業が作り上げた「完璧な理想像」の隙間を突くことにあります。生活者一人ひとりの生々しい熱量(UGC)を公式がハックし、最大の武器に転換するアプローチこそ、2番手ブランドが選ぶべき戦略です。
これからのブランドマネージャーに求められるのは、自社シナリオを一方的に発信することではありません。市場に散らばる「ファンの声」、技術を誇る「R&D」、売場を守る「営業・小売バイヤー」を、データとストーリーで繋ぐことです。ファンの熱量を味方につけ、市場に新たな事例を創出していきましょう。
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