聞く技術研究所

2030年の働く環境が見えてくる【月刊よげんの書2023年10月:よげん9】

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は10/27に行われた「月刊:よげんの書10月号」で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。

2030年の働く環境が見えてくる

2030年をゴールとした取り組みがたくさんある

2030年まであと7年。カーボンニュートラル、生物多様性条約、SDGs、未来投資戦略、DX、ロボット革命イニシアティブなど、2030年をゴールとしている取り組みがたくさんある。つまり、2030年は未来へのマイルストンになっているのだ。残り7年間しかないので、これから未来に向けて急速に進めないといけない施策が多い。スピードアップする必要がある中で、ビジネスマンはどうなるのか。

2030年〜2050年の日本のカタチ

今後100年で人口は明治時代の水準に戻る。2030年の人口予想は1億1522万人で、65歳以上が3,700万人。高齢化率は31.8%と予想されている。問題となるのは、生産年齢人口。2030年には6,773万人で、深刻な労働力不足となる。今でもすでに影響があり、タクシーの運転手の不足により、地方のタクシー会社では100台のタクシーのうち、50台が動かせない状況にもなっている。つまり、稼ぐチャンスがあるのに、動かせなくなっているのだ。今後、人手不足倒産もでてくるかもしれない。

不足する労働力への対応

不足する労働力への対応が、ビジネスマンに大きく影響してくるだろう。パーソル総研と中央大学の共同研究では、2030年には644万人の労働力の人手不足が起こると予想されている。働く女性、シニア、海外人材を増やしても人が足りず、さらにロボットやAIなどを活用して労働の生産性を上げることで需要を下げることが必要だと言われている。

女性が活躍する環境が整ってくる

子育て期の女性の就業率が下がるM字カーブは解消に向かっている。子育て期から始まる女性の正規雇用率が下がるL字カーブの解消が次の課題。異次元の少子化対策等の施策によってL字カーブ解消への道筋が見えてくるだろう。年収の壁を取り払うことで正規雇用率が上がれば男女の所得格差等も解消に向かう。
経団連は、ポストコロナの成長戦略として、持続可能な資本主義社会の実現のため、2030年に役員に占める女性比率を30%にする目標を掲げている。賛同企業は2023年2月現在大手企業を中心に200社を超える。

生涯現役を志向する人が増える

国立社会保障人口問題研究所によると、日本人の平均寿命(2000年⇒2030年)は男性:77.72歳⇒81.95歳、女性:84.60歳⇒88.68歳なので、健康な人が多い。70歳までは健康に働ける資質を持っていることで、70歳、75歳まで働く人が増えるdふぁろう。定年70歳は現在努力目標だが、いずれかは義務化するだろう。そうすると、これまでの3ステージモデル(勉強し、仕事をし、引退する)が成立しなくなる。これからの人生はマルチステージモデルということで、多様な働き方を自分でデザインするようになる。

柔軟な働き方が浸透する

コロナでテレワークが普及したので、働く場所と時間については選択肢が出てきた。それらを組み合わせて最良のワークデザインができるようになっていく。テレワークを導入すると、女性の労働時間が週に8時間ほど増えるという試算もあった。柔軟な働き方が浸透することで、労働力不足を少し解消できるのだ。

さらに多くの海外人材が必要になる

JICA、価値総合研究所の試算では、自動化等への設備投資ができたと仮定して、2030年に419万人、2040年に674万人の海外人材が必要だとされている。設備投資がこれまでのトレンド通りの水準(設備投資が十分にできていない)だと仮定するならば2030年に1,179万人、2040年に2.183万人の海外人材が必要となり、倍の人数が必要になるのだ。試算により数は変わる可能性もあるが、多くの海外人材が必要になる。

生産性の向上が求められる

パーソル総研によると、AI、ロボットの活用による自動化が進むことで、人が手をかけて行っていた作業がなくなり、4.9%の工数の削減が可能となる試算だ。それにより、298万人分の労働需要をカバーできるとしている。

テクノロジーによって雇用の構造が変わる

AI、ロボットの活用が増えると、雇用が減る職種、増える主職種がハッキリする。事務、秘書、会計士や工場労働者は減る傾向にある。増える職種は専門家などで、データアナリストなどだ。増える主要職種の方が多い試算ではあるが、減る職種もある。

人材の需要と供給のミスマッチが起こる

雇用の構造が変わることにより、人材の需要と供給のミスマッチが起こることが予想されている。三菱総合研究所によると、2023年は需給バランスでいうと底にいる。これから改善するが、今後過剰になるのは、事務職と、工場で働くような生産職。一方で、専門職が不足する。

ミスマッチ解消のためリスキリングが定着する

テクノロジーの進化と自動化によって、今後10年間で「11億」もの仕事が変化を遂げるが、世界中の労働者はこの変化についていけない状態。そのことで格差はますます広がるだろう。そのためには、各国の政府が、社会的流動性を機能させることに重点を置いた取り組みを始める必要がある。考え方を変え、医療や教育の予算を変え、適正な賃金を確保するとともに労働環境を改善し、生涯学習のシステムを整備すること。企業の役割は生涯学習、リスキリング(再訓練)、スキルアップのシステムを提供することになる。そして、人々がより自分に適した仕事に転職できる制度を整えるために企業と政府が協力すること。2030年までには世界で10億人のリスキリングが必要といわれているのだ。

2030年のビジネスパーソンを取り巻く環境

多様な同僚、上司、パートナーとのコラボレーション

同質の人に囲まれていた時代は終わり、シニア世代も含めた幅広い年代、多様な立場の女性、多国籍の人々との協働作業をしなければならない。

働く場所、時間を組み合わせ、最適な状態でワークデザイン

会社から言われたことをするだけの時代は終わる。テレワークと対面を組み合わせ、効率的で最適なスタイルで仕事のしかたを自分で考え、調整しなければならない

人生100年時代のマルチステージに対応したライフデザイン

教育フェーズを終えてからおよそ50年間働くために、学習、起業、会社員、ボランティアなど多様な体験を組み合わせた人生設計をしなければならない。エスカレーターではなくなり、自分で選ぶ時代になる。

AI、ロボットに置き換わらない仕事のスキルを身につける

新しい時代に対応するスキルを身につけるためにリスキリングをし続けなければならない。仕事と学びが一体化する。絶えず創造性を求められるだろう。

これからの労働者に何が起こるのか

フランスを代表する経済学者であり思想家、パリ経済学院教授であるダニエル コーエン(著書「経済成長という呪い」)によると、

これからは、ルーチンワークはテクノロジーに置き換わっていく。これまでは労働者は「体力」を企業に提供してきたが、これからは「創造性」の提供を求められる。私たちは生産性を向上させ、想像力を高め、職を奪っていくテクノロジーに打ち勝たねばならない。私たちは新たな競争の世界に突入し、緊張感を強いられている。常に自分を変革することを強いられているということだ。それがストレスと緊張を生むため。今の社会では燃え尽きてしまう人が大勢いる。人々は能力の限界まで出し切ることを求められている。それが昔の労働者とは異なる点だ。

自己再生を求められる時代がやってくるだろう。

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