消齢化社会のヒット商品が次々と誕生する【月刊よげんの書2023年6月:よげん5】

2023.09.22

聞く技術研究所

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になりましたら幸いです。



消齢化社会のヒット商品が次々と誕生する


日経MJ 2023年上期ヒット商品番付がでた


日経MJ 2023年上期ヒット商品番付で東の横綱は「5類移行」(新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し、旅行や外食が活気を取り戻した。)西の横綱は「WBC世界一」(14年ぶりの日本代表の優勝が全国を沸かせた。)脱コロナの生活は消費者を高揚させ、国境を越えるヒットが次々と生まれている。そんな中、いくつか注目したのが、世代レスな消齢化社会を背景に持つヒット商品だ。


若者と大人が溶け合うタテ型消費


人口構成比、人口減と少子高齢化が進み、今や日本人の平均年齢は50歳近くなっている。2030年には50歳以上が過半を占める予想だ。成人人口をみても40代以上が全体の7割を超えている。この結果、購買層が縦に伸びるコンテンツやアーティストほど、メガヒットにつながっていく傾向になった。これまで若者とヤングファミリーをしっかりとらえることがマーケティングの中心だったが、今後は年齢層を超えた縦型のマーケに軸足を置く必要がある。


博報堂生活総合研究所「生活定点データ」で見えてきた消齢化。年代の壁が消える


価値観や嗜好を年代/年齢によって塊として捉えることはよく行われがちだ。だが、博報堂生活総合研究所の「生活定点データ」によると、20年前、30年前と比較すると、以前は大きかった年代による価値観や嗜好の違いが、実は年々小さくなっていることが分かってきた。

経済格差など量的な差が広がる中、定性的な生活者の日ごろの感情や生活行動、消費態度、社会観など、多角的な質問から生活者の意識や欲求が、長期間でどう変化したのかを見ると「意識や欲求」といった質的な面で、実は“違い”が小さくなりつつあり、社会が「消齢化」されているといわれている。


映画・ゲーム等ではレトロでもあるけれど、世代を超えて支持を集めるコンテンツがヒット

日経MJ 2023年上期ヒット商品番付に入っていたエンタメを見ると、マリオ、スラムダンク、ゼルダの伝説、コナン、ハリーポッター、村上春樹など、40代からそれ以上の人も若い年齢や子どもの時からある作品だ。世代を超えて支持を集めるコンテンツがヒットしている。


生コッペパン:ファミマ

日経MJ 2023年上期ヒット商品番付にはファミマの「生コッペパン」もランクインした。「生コッペパン」の生地で目指したのは「懐かしさ」と「新しさ」の両立。企画段階で中高年と若年層の架け橋を掲げた。CMでも中高年と若年層の両方に届くようPRした。これまでコッペパンを使った商品の主な購入層は40~50代の男性が中心だったが、発売後は女性客の購入が8~9%増加した。


ユニクロのラウンドミニショルダーバッグ

東の小結にランクインしたのは約40年のユニクロ史上もっとも売れたバッグ、「ラウンドミニショルダーバッグ」だ。欧州で爆発した人気が日本にも波及した。開発者が目指したのは「利用者を男性にも女性にも限定せず、誰の着こなしにも合うクセのないデザイン」。実際に購買者は男女がほぼ半々で、年齢層も若者からシニアまで幅広い。開発責任者の炬口さんは「エアリズムマスク」など話題の商品を次々に仕掛けてきたユニクロの「ヒット請負人」だ。意識しているのは「どれだけ裾野が広いか」だという。


マーケティングを行うとき、性別や年代などを絞って考えがちだ。だが、消齢化社会となりつつある中、日経MJ 2023年上期ヒット商品番付をみても、そこを取っ払って考える必要があるだろう。

昔消費は自己表現だという時代があった。ブランドを選ぶのは、自分自身の表現だった。皆と違うものを選んでいた。携帯電話でも、みんな違うデザインだった。それが自分らしさだったのだが、iPhoneが登場してから、同じものを持つようになった。皆が持っているものの方が安心になっていった。それまでは差異を追及していたのが、大きなプラットフォームをどう作るか、に変わっていった。ユニクロがうまくった理由もそうだろう。
ターゲットは似た価値観を持った人が集って、一緒のものを持っていた方が安心できるマーケティングというものが求められるのかもしれない。

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